日々:その三十七

10月1日(日)

どんとに会いたくなるんだ。今日はそんな日。

私は、どんと、こと久富隆司に長く心酔していた時期がある。

歴史や思想、全てをまっると覗いてみたくなる。そんなような人物だと思う。

自宅2への帰り車中。

ボガンボス、京都磔磔88年のライブ盤を。

まさに蔵出しの一枚。

演奏の技術(とはいえ、メチャクチャに上手いです。KYONさんの存在が大きいと思う)や歌詞や歌声は関係ない。

もっともっと別次元へ連れて行ってくれるロックがここにはある。

有無も言わずにかっこいい。

それだけでいいのよ、音楽ってやつは。


10月4日(水)

映画’リメンバー・ミー’鑑賞。

ミュージシャンを夢見るギター少年の素晴らしい映画。(これはディズニー映画なのかな??)

メキシコに思いを馳せる。

その昔、数年季節を分け合った彼女がメキシコで最も有名な祭り「死者の日」に向かうべく、ミチョアカンに向かった。

帰国日、とても暗い顔をしている彼女に何かあったのか尋ねてみると、

地元で知り合ったメキシコ人男性と一夜を共にしたという。

’まぁその感覚、わからなくもないよ。’と伝えると、なんとも言えない顔。

この世の中、言ってもよいことと言わなくてもよいことがあるのはわかる。

ただ、そこがとっても難しいのよね‥お互いに。

映画を観ながら、久方ぶりに思い出した遠い日の記憶。


10月5日(木)

命日。

あなたがこの世からいなくなってから3年も経ってしまいました。

やっぱりまだまだ泣いたり挫けたりしているんです。

心でも泣いています。

寂しいんですよ。


10月6日(金)

朝の掃除。

ここ最近一気に枯葉が多くなった。街ゆく人も衣替え。

春夏秋冬、外の掃き掃除は季節の移ろいを私に教えてくれる。


10月7日(土)

Q’もしも生まれかわったら何になりたいと思いますか?’

A’生まれ変わったらまた自分に、とは思いません。蝉なんかいいですね。成虫に至るまでに土の中で多くの時間を費やして一週間で果てる。そういう生き方も面白そうです’

イチローさんへのインタビュー。

大変に興味深い。


10月8日(日)

ウクライナ-ロシアの紛争に先が見えない中、イスラエル-ハマスが戦争状態との重いニュース。

バックパッカーでアジアを回っていた頃、

タイからラオスに入国するため国境付近のファイサーイに一週間ほど宿泊していた(何もない田舎町、今はどうなんだろう。もう一度訪ねてみたいな)。

ゲストハウスの中庭でイスラエル人の女性(名前を忘れてしまった。ごめん。)と仲良くなった。

少し年上の彼女はいつもマリファナを吸っていて、気分はいつもハイでゆっくりとして落ち着いていた。

’KO(海外で自己紹介するときにKOHEIだと長くて覚えにくいので、KOと名乗っていた。)も一緒にマリファナどお?’

’日本は素晴らしい国なんでしょう?’

’今日もランチ一緒に食べようよ’

’神様は信じている?’

’今夜も一緒に散歩に出かけようね’などと、いつも気にかけてくれていた。

同じ地球上でも美しくて眩しいと思う世界が存在する反面、殺戮を繰り返すとんでもない世界が広がっている。

そしてそこには、資本主義や宗教が複雑に絡んでいる。

悲しいけど、現実は一つではないのだ。


10月9日(月)

整理番号322番。

静岡、浜松。サニーデイ・サービスのライブへ。

終演後の楽屋、バタバタしている中、曽我部さんが握りしめていたセットリスト、

それを私に無言で手渡してくれた。

自分自身の心臓の高鳴りが聞こえた。

ライブハウスを出ると、雨だった。

傘はない。

濡れないようにもらったセットリストをシャツの中に大切にしまい、

走ってホテルに向かう最中、心底はるばるとここまで来てよかったと思った。

ひょっとしたら、私の青春はまだ続いているのかもしれない。


10月11日(水)

藤井聡太棋聖、8冠タイトル達成。

まだまだお若いでしょう。

これからが少し心配‥。


10月12日(木)

多くの人は失敗したら恥をかくと感じると思うんだけど、意外と恥はかかないです。

そんなこと誰も気づいていないし、誰も気に留めていないから。

この先も私の失敗は続くけど、いかなる場合も諦めません。

いつだってトライ&エラーを繰り返すのみ。


10月12日(木)

どういうわけか、何年かに一度の空前の写真集ブーム到来。

きっと自分自身が旅に出始めたからだと思う。

風景を切り取る感覚が今はとても面白い。


10月13日(金)

もっとも大切な人の誕生日。

人生を歩むこととは、自分を本当に必要としてくれる人に支えられているということだと思う。

いつもありがとう。


10月14日(土)

Hさんから廃盤のレアなCDを借りる(いつもありがとうございます)。

’My Foolish Heart’チェットの素晴らしい歌声に感涙。

チェット・ベイカー、オキ・ヨハンソン、トゥーツ・シールマンスの偉大なる個性の選逅。

チェットとヨハンソンの録音は’Live in Sweden’1983年のものが残されているが、

これはその2年後、同じくストックホルムで録音された作品。

自分の聴いたことのない音楽(JAZZ)がまだまだある。

これだから、JAZZはやめられないんだよなぁ。


10月15日(日)

少し立ち止まってみませんか。

きっと違った景色が見えるはずですよ。


10月16日(月)

実は昨日から’怪しいな’と思いつつ知らぬふりをしていたが、

朝起きてみると、やはり体調が芳しくない。

熱を測ると38.5度、10時にもう一度測ってみると39.5度だった。

さすがに立ち上がれない程になってしまう。

携帯で近隣の病院を探し、タクシーをつかまえ町医者へと向かったのは午前の診察が終わりかけの時間帯。

私「初診なのですが」

受付看護婦「ネットで予約はしましたか?」

私「??しておりません。」

受付看護婦「初診はネットで予約してもらわないと受診できないんです。」

私「今、熱が39度を超えておりまして、なんとかならないでしょうか?午前の診察時間には間に合っていますし‥。」

受付看護婦「無理ですね。規則なので。」

意識は朦朧としていたが、大体こんな話の内容だったと思う。

「ネットで予約はしましたか?」「無理ですね。規則なので。」

「ネットで予約はしましたか?」「無理ですね。規則なので。」

「ネットで予約はしましたか?」「無理ですね。規則なので。」

「ネットで予約はしましたか?」「無理ですね。規則なので。」

「ネットで予約はしましたか?」「無理ですね。規則なので。」

「ネットで予約はしましたか?」「無理ですね。規則なので。」

脳内でおぞましくリフレインする看護婦の言葉。

熱さと寒気とめまいの同居する身体と心を奮い立たせ、泣きながら再度自宅を目指した。

夕方、別の病院で検査を受ける(コロナ・インフルエンザ共に問題なし)。

’朝から一人で大変だったでしょうに。もう大丈夫よ。今日はとにかく安静にね。’

笑顔がとても素敵な看護婦さん。

この世界に天使は必ず存在する。


10月19日(火)

天使のおかげですっかり回復の兆し。

寝ることを意識するようになって何年か経つ。

’私は睡眠力は幸福力ではないかとと思っている’とは水木しげる先生の大名言。

体調は崩れてしまうもの。

日々注意が必要だ。


10月18日(水)

心を支えるのは身体。

身体を支えるのは心や想い。

世の中、足の引っ張り合いだらけで悲しい。

Q’世界平和のために、私は何をしたらいいでしょうか?’

A’あなたの家に帰ってあなたの家族を愛して下さい。’

マザーテレサの回答。

まずは目の前にいる人を、ですね。


10月20日(金)

ユニクロの柳井社長は、大学2年生の時、100日間で世界を一周する旅に出た。

100日間で世界を一周する旅は、世界は今こうなっているのかと実感する経験だったという。

非常に貧しい国の現状も自分の目で見ることができたとも。

そしてこの100日間がのちに世界で展開する仕事へとつながったのは間違いないと言っている。

人生の100日間。

旅に出るのか出ないのか。大きな経験の違いになるのは明白だろう。

旅先で徹底的に孤独になり、

寂しさや自分のちっぽけさ、人の優しさや家族の尊さなんかをあらためて自分にインプットする。

たとえ100日じゃなくても、行くか行かないのか。

それだけだ。


10月27日(金)

生まれた日は、昭和52年10月27日木曜日の大安、朝方だったそうだ。

自分自身、また一つ歳を重ることができた。

貧乏は大いに結構。見栄っ張りや貧乏臭くはなりたくない。

上品になることはできないかもしれないが、下品にはなりたくない。

朝方、’産んでくれてありがとう’と母親に感謝のメールをした。

夕方、’こちらこそありがとう。いつも心に太陽を持ち続けて自分らしく一生懸命生きて下さい’と母から。

携帯電話を強く強く握りしめた46回目の誕生日、夕暮れ時。




10月30日(月)

スリランカ・シーギリア。

また一つ行きたい土地が増えてしまった。

旅をして、まだ見ぬ自分自身に会いに行くか。


10月31日(火)

やっぱり仕事に関していうと最終行程を機械に任せたくない。

飲食店での食事の配膳やお会計のセルフレジ、

ロボットが少し冷めつつある食事を持ってきたり、

’ご来店ありがとうございました’と、どこに発しているのか定かでないような言葉を機械に言われてもね。

食器を洗うにしても、カトラリーやグラスを磨くにしても、どこにだって最後は人の優しさが必要だと思う。

対面でありがとうございます。当たり前だけどとても大切なこと。

商売人として、その前に人として。

そんなことを考えながら、私自身、明日からもカウンターに立ち続けようと思っている。